1977年(監督:山田洋次)
ロケ地:

30本以上の北海道ロケ映画に出演した高倉健。男気あるやくざ(「網走番外地」)や、実直な仕事人(「駅 STATION」「鉄道員(ぽっぽや)」)など、北の果てに生きる一本気な男を魅力的に体現した彼のイメージを一言でいうなら“寡黙で不器用”。ロードムービー「幸福の黄色いハンカチ」もまさにそんなキャラクターで、刑期を終えたばかりの元炭鉱マン・島勇作を演じている。
網走刑務所を出所した島は、真っ赤な車に乗る欽也(武田鉄矢)&朱美(桃井かおり)カップルと知り合う。実は2人とも、失恋してヤケになった末の一人旅。ナンパに成功した欽也は舞い上がっており、一方の朱美は戸惑っていた。微妙な空気の中、3人は道中を共にする。案の定(?)欽也が朱美を押し倒そうとしたり、車が故障したりとアクシデントを起こしながらも、距離を縮める3人。あるとき、島は秘密を明かす。夕張に妻・光枝(倍賞千恵子)がいたこと。出所直後、彼女に一通の葉書を出したこと…。
阿寒、陸別、帯広、新得、富良野、歌志内、そして夕張へ。当時20代の武田&桃井コンビと健さんの掛け合いは面白いが、今は観光施設となった陸別駅の国鉄時代の木造駅舎や活気の残る炭鉱街など、背景に映る往時の街並みにもつい見入ってしまう。監督はこのコラムで前回取り上げた「男はつらいよ」の山田洋次で、渥美清や三崎千恵子、太宰久雄らお馴染みの面々が登場するのも楽しい。
夕張までの道のりと交差して綴られる、島と光枝の回想シーンも美しい。札幌でデートし、雪の夕張に帰る場面では2人のときめきが画面からあふれるかのよう。それだけに、不本意な結末が悲しい。誰より大事な存在だった彼女に、島が離縁を告げたのはなぜか。なのに、葉書を書いたのはなぜなのか。「愛している」なんて口が裂けても言えない彼だからこそ、沈黙の裏にある叫びに胸が熱くなる。そして一層、旅の最後に見つけたハンカチの黄色が目に沁みるのだ。
さて、映画はあくまで虚構の世界だが、ラストシーンのロケ地は「幸福の黄色いハンカチ想い出ひろば」となって保存され、夕張の本当の風景となった。私が4年前に訪れたときは、埼玉と岐阜からの旅行者と会い、映画談議に花を咲かせた。冬、「ひろば」はお休みだが、映画ファンには別のお楽しみがある。そう、「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭」だ。
私は学生だった2005年に初参加し、翌年にはなんと、ゲストの桃井かおりさんとパーティーで対面した!(緊張して何を話したかはほとんど記憶にない) その後、市の財政破綻で途絶えかけたものの、応援映画祭も含め毎年続いているのが心底嬉しい。寒い冬、交通の便も良くはない夕張に行きたくなるのは、そこにしかない人と作品との出会いがあるから。29回目を数える今年は3月7日から開催予定で、今から私はそわそわしている。
イラスト&文 新目七恵(あらため・ななえ)
“三度の飯より映画好き”の札幌在住フリーライター。NPO法人「北の映像ミュージアム」所属。子どものころチャップリンに爆笑し、大学生のときロック・ミュージカルの金字塔「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」に衝撃を受ける。函館の地方紙記者時代に佐藤泰志小説の映画化第1弾「海炭市叙景」に携わり、“北海道と映画をつなぐ”ことがライフワークに。2016年からZINE「映画と握手」を個人発行し、北海道マガジン「カイ」サイトでもミニコラム「映画と握手」を連載中。最近のお気に入りは清水宏監督とインド映画!