2019年(監督:-(制作:HTB))
ロケ地:札幌、石狩

「PICU 小児集中治療室」「日本統一 北海道編」「続 遙かなる山の呼び声」と、昨年は北海道ロケドラマが豊作だった。「孤独のグルメ2022大晦日スペシャル」の舞台も北海道だったし、朝ドラ「舞いあがれ!」にも私の故郷・帯広が登場。そしていよいよ2月25日からは、札幌が舞台の人気グルメ小説を実写化した「弁当屋さんのおもてなし」が放送される。HTB開局55周年を記念したこのドラマに私が期待するのには理由(ワケ)がある。何といっても、HTBの前作「チャンネルはそのまま!」がめっぽう面白かった! というわけで今回は特別編、北海道ロケのドラマをご紹介したい。
舞台は札幌のローカルテレビ局。突飛な言動からトラブルを起こし、〝おバカ旋風〟とでも呼びたくなる奇跡をもたらす新人・雪丸花子(芳根京子)の奮闘を描くコメディー。優秀な同期記者・山根(飯島寛騎)や上司の長谷川(大内厚雄)らテレビ局員の面々が彼女に振り回される様子が笑えるが、花子以上におバカ(?)なベテラン社員・小倉(藤村忠寿)の存在感も抜群。甘いもの好きで「面白さ」に貪欲なテレビ局員…と聞けば、お分かりだろうか。そう、「小倉」のキャラクターは、あの伝説的バラエティー番組「水曜どうでしょう」でお馴染み、演じたHTBの名物社員・藤村さん本人がモデル。北海道在住の漫画家・佐々木倫子から取材を受け、原作漫画の制作に全面協力したHTBが、今度は自社で映像化するという、ファンにはたまらない実写ドラマなのである。
実は、そんなファンの一人がこの私。北大獣医学部をモデルにした「動物のお医者さん」などで知られる佐々木漫画の最新作シリーズを、発売と同時に購入。絵のリアルさ(特に「小倉」は藤村さんに激似だった)と佐々木ワールド独特のテンポから醸し出されるユーモアに、うなっていたのだった。
そうしていざ撮影が始まったら、テレビ情報誌の仕事で私にロケ取材の機会が巡ってきた。立ち会ったのは、花子が新卒採用3次試験に挑戦する第1話のシーン。原作の世界観を大切にした個性的な演技を繰り広げる俳優さんたちに見入っていると、受験者役に知った顔が…。なんと、私が市民スタッフとして携わった函館ロケ映画「海炭市叙景」(2010年)で小林薫の息子役を演じた信山紘希君ではないか! 意外な再会を喜び合ったのも、嬉しいサプライズだった。
この作品の面白さを語るには紙幅が足りないけれど、天然ボケで憎めない主人公・花子役の芳根さんはもちろん、「バカ係」こと相方的存在・山根を演じた札幌出身の飯島さんら出演者の熱演は大きい。ドラマのオリジナルとなるカリスマ農業技術者役の大泉洋さんをはじめTEAM NACSメンバーも総出演し、縁の深いテレビ局の物語に華を添える。移転するタイミングでHTBの旧社屋と新社屋をロケ地に使うという、贅沢かつ絶妙な設定も見事だった。
さまざまなズッコケ爆笑エピソードに通底するのは、テレビへの〝LOVE〟だ。特に花子がバイオリン演奏を演出する最終話のひとコマは、大いに笑って、少し泣かされる。冒頭に挙げたドラマにも、裏で支える人たちが大勢いる。身近なテレビのチャンネルが愛しくなる、そんな痛快ドラマだった。
文&イラスト 新目七恵(あらため・ななえ) ライター、ZINE「映画と握手」発行人。HTBは1996年から北海道を舞台にした単発のスペシャルドラマ制作を続けており、自社の動画サービス「hod」で有料配信中。私のお気に入りは「大麦畑でつかまえて」(2006年)。上富良野でビール大麦とホップを生産する農家ファミリーの物語です。
