伏尾 美紀(講談社文庫)
登場する地域:札幌、小樽、恵庭 等

主人公は、博士号を経歴に持つ女性警察官である。刑事の現場捜索とはいかなるものか学び、北海道警察の組織体制も絡めながら、容疑者死亡の未解決事件(=コールドケース)の真相を追っていく。少女死体遺棄事件と五年前の幼女誘拐事件の謎を辿ると、そこには捜査員たちや被疑者らのリアルな生活があった……。第67回江戸川乱歩賞受賞作、かつ、著者デビュー作。
札幌市が物語の舞台で、所轄は中央区から南区を通る石山通に面している。JR札幌駅や手稲の5号線近くが事件の現場となる。ススキノや麻生で情報を集め、時には実家の恵庭市に帰り、捜査では小樽市や余市町にまで足を運んでいる。札幌市近辺になじみのある方なら、「ああ、あそこね」と地図を脳裏にイメージしやすく、大変親しみを持てるだろう。
事件捜査と並行して、三十代女性の複数の様相も描かれている。仕事のやりがいと立身出世を目指して邁進することへの疑問、転職して異なる業種へ移るべきか、家庭を持って子どもを望むのか、離婚やはたまたシングルマザーとして子どもを育てるのか。親の病気への心配もある。女性の生き方の分岐点がいくつも描かれていて共感できる内容となっている。
警察組織といういわゆる男社会の中で、自身の役割に翻弄されながらも、被疑者の本心に迫るラストの展開は圧巻である。現代を生きる女性におすすめしたい一冊(もちろん男性の方にも)。