渡辺 淳一(新潮文庫)
登場する地域:今金町、せたな町

日本公認女医第1号の荻野吟子(ぎんこ)の生涯を描いた小説だが、後半部分は自身が入植した「イム(ン)マヌエル」(現今金町神丘)での生活に割かれている。
吟子は17歳で結婚するが、不幸にも夫から性病を移される。その治療で男性医師から診療を受ける恥辱に女性医師の必要性を強く感じ、自らが女医を目指すことになった。しかし、当時の医学校は男子学生のみの完全な男性社会。多くの苦労や差別に苦しみながらも明治18年、医師開業試験に女性として唯一合格し、夢を実現させる。その後、女性地位向上運動に取り組むキリスト教に奉じ、その縁で13歳年下の学生、志方之善と再婚。志方の北海道での「理想郷づくり」に殉じ、一開拓員として利別原野への開墾に入植する。
「花埋み」は明治期の女性史的な価値はもちろん、北海道命名150年の今年、北海道の近代の歴史を振り返る資料としても有用なものとなっている。