中谷 宇吉郎(岩波文庫)
登場する地域:上富良野町、北海道大学

「雪の結晶は、天から送られた手紙であるということが出来る」
この有名な一節は、次のように続く。
「そして、その中の文句は結晶の形及び模様という暗号で書かれているのである」
中谷宇吉郎は「暗号」を解くために、昭和8年(1933年)、十勝岳山麓の白銀荘で、ほぼ全ての形の結晶を観察し分類を行った。世界中の研究者が何十年もかけてきたデータを、この地において数年で集めたのである。さらに、その3年後、北海道大学の研究室で、世界ではじめて人工雪の結晶を作製した。
科学には、知識だけではなく、自然の美しさやおもしろさに感動することが必要であると考えた中谷は、この研究を英語論文とともに、日本語による随筆の形式で語った。
雪と人間生活、雪害、さらには自身の研究動機に至る科学的な考えを、芸術の一部門としてとらえ、身近な物や現象のあるがままを、偏見や伝統から切り離して自由に表現した。
当時、いろいろな人から雪の結晶の易しい観察法を尋ねられた時、中谷はこのように答えた。
「腕を曲げて、外套の袖にのっている雪をごらんなさい」(『中谷宇吉郎随筆選集』朝日新聞社)