三浦 綾子(新潮文庫)
登場する地域:旭川

『積木の箱』には二人のキーパーソンがいる。一人は北栄中学校の教師である杉浦悠二、もう一人は悠二が担任するクラスの佐々林一郎である。そのどちらにポイントを置くかによってこの作品の読み方は大きく異なる。
前者であれば教育現場で困難に直面する教師の物語、後者であれば思春期(反抗期)を迎えた生徒の葛藤の物語と捉えることができる。
一郎の父親は道内でも有名な実業家であり、家は裕福だった。だが、一郎はあるとき、それまで姉だと思い込んでいた奈美恵が父の妾であることを偶然知ってしまった。家族にそれぞれ個室が与えられており、しかも父と奈美恵の部屋はつながっていた。子どもたちから事実を隠蔽することには母親も加担していた。
事実を知ってから一郎の教室での態度は激変した。父親に直接反抗できない彼の矛先が悠二に向けられたという部分はある。しかも一郎にとって悠二はうっとうしい存在だった。悠二はよかれと思って一郎をきつく叱りつけない。その思わせぶりな態度がよけい一郎の反発心をあおり、一郎の行動はエスカレートしていく。
その中にあって小学1年生の川上和夫は一郎の心を慰めてくれる存在である。だが、一郎は自分の父親がかつて川上久代を凌辱し、その結果生まれたのが和夫であることを後に知る。父親への憎悪と悠二への反発の中、一郎はこの後とんでもない行動に出るのだ。
タイトルの「積木の箱」は、教育の難しさを象徴的に示している。