湊かなえ(朝日文庫)
登場する地域:北海道

湊かなえといえば、『告白』や『母性』などに代表されるように、ミステリーをイメージされる方も多いだろう。しかし、本作品は、謎解きの手法を使いながらも、従前の作品とは全く違った世界に私たちを誘ってくれる。
話は、作者不明で結末が描かれていない一冊の小説「空の彼方」を中心に、北海道の各地を舞台として展開していく。病を宣告された母親は北海道に渡る船の中で、夢をあきらめ家業を継ぐことになった男性は美瑛の丘の前で、テレビ制作会社に内定をもらった女学生はサイクリングで立ち寄った三浦綾子記念文学館のある見本林のなかで、娘の夢と向き合えない父親は網走湖畔のライダーハウスで、自己投資を続けて働き続けた末に管理職にまでなった女性は洞爺湖のリゾートホテルで、長く教員生活を送っていた男性は友人の退職パーティーが行われた札幌のホテルで……。さまざまな思いを抱えた人たちが、北海道という地で出会った「空の彼方」の結末をどのように描くのか。そして、「空の彼方」の本当の結末はどのようなものなのか。
この〈物語のおわり〉は読んだ人のなかに紡がれていく。本を閉じたあと、北海道の景色とともに、静かに自分と向き合いたくなる一冊だ。