澤田展人(北海道新聞社)
登場する地域:小樽、札幌、等

交通事故で同乗していた女性を死なせてしまい、厭世的な毎日を送る亮次。幼少期に母親から虐待を受けて、感情を上手く制御することのできない恭介。「生きづらさ」を抱えたふたりの人生は、平行線でありながらも混じり合っていく。
物語は小樽から始まり、舞台の中心となる札幌へと移る。札幌の街における二人の静かな交流から、生命の熱量がゆっくりと伝わってくる。また、JR貨物運転士の試験区間である函館から室蘭の場面は、恭介の心情と相まってページを繰る手が止まらない。クールを貫いてきた亮次が真っ直ぐな恭介の影響を受け、本当の自分を発見する白滝の場面は秀逸である。
題名である「ンブフルの丘」は、沖縄の竹富島にある展望台。北海道と正反対の地で繰り広げられる絶望や諦め、それらを超越した若者の明るさには胸迫るものがある。転職や挫折を繰り返し、それでも生きていくふたりの生き様は、私たちの心を激しく揺さぶる。それは、窮屈な日本社会にあらがうふたりへの賞賛なのかもしれない。
30数年間、高校教諭として生徒を見守ってきた著者のまなざしが、物語を優しくつつむ。