乃南アサ(講談社)
登場する地域:帯広

開墾の はじめは豚と ひとつ鍋
六花亭の銘菓『ひとつ鍋』の由来となった句だから知っている人も多いと思う。帯広開拓の苦労を伝える句である。
開拓にあたったのは依田勉三率いる晩成社。その奮闘を幹部の一人である渡辺勝の妻、カネの視点で描いたのが『チーム・オベリベリ』である。
開拓団にはこれでもか、これでもかと苦労が降りかかってくる。人力での開墾は遅々として進まず、ようやくたどり着いた収穫の直前にイナゴの襲来。それでもあきらめず、また一から始める。その先にようやく寒冷の地に合う畜産に光を見いだそうとする。そんな時にこの句が生まれた。豚の餌として煮込んだものを酒のつまみがわりにするほどの暮らしだった。
カネは共立女学校の第1回生で、卒業後同校で教員として働いた。いわば時代の最先端の女性が夫とともに北海道に渡り、開拓の苦難の中で自分のすべきことを見いだしていく。どんな困難にも辛抱強くあたる一方で、子どもたちに読み書きを教え、アイヌの人々にも隔てなく接した。1945年、終戦まもなく86歳でその生涯を閉じるまで、一貫して信仰と教育に力を注ぎ「帯広教育の母」と呼ばれるようになった。
渡辺夫妻の入植を現代に伝える碑は、国道38号線沿い、チョコモンブランで有名なおびひろろまん亭本店の入り口脇にひっそりと建っている。