三島由紀夫(角川文庫)
登場する地域:函館・札幌・千歳

松浦夏子は東京生まれの20歳。彼女は突然「修道院に入る」と宣言した。「我儘娘」と形容される彼女は美貌の持ち主ゆえ、言い寄る男たちが数多くいる。だが、彼らに飽き足りない彼女は新たな刺激を求めた。彼女は一度言い出したら聞かない。結局入会後6カ月は脱退可能な函館の修道院に入ることが決まり、その彼女を祖母・伯母・母が函館まで送り届けることになった。
その移動の途中で夏子が出会った青年が井田毅である。彼は結婚したいと思っていた女性が熊に殺され、いわば仇討ちをすべく猟銃を持って北海道に渡ろうとしていた。彼と行動を共にすべく、夏子は湯の川のホテルから置き手紙を残して失踪した。残された祖母らの動揺ぶりはユーモラスですらある。
井田は当初夏子から逃げようとしていた。だが、彼女はあらゆる手練手管を使って井田の居場所を突き止める。
最終的に井田は熊の捕獲に成功し、夏子との結婚を夢想し始める。だが、もはや夏子には井田は魅力的な青年ではない。「夏子、やっぱり修道院に入る」という結末の言葉はまさにどんでん返し。主人公たる夏子の面目躍如の感がある。
三島由紀夫に近づきがたいというイメージを持っている人には是非お薦めしたい作品。一説には、村上春樹がこの作品を対象化して『羊をめぐる冒険』を書いたとも言われている。