高田郁(ハルキ文庫)
登場する地域:札幌市、陸別町

『あい─永遠に在り』は、現在の千葉県東金に生まれ育ち、その後医師としてまれにみる精進を重ねた関寛斎の妻あいの一生の物語である。 銚子から(夫の長崎留学を挟んで)徳島へそして札幌へ、さらに陸別へと続く人生は「人たる者の本分は眼前にあらずして、永遠に在り」のとおり、波乱万丈に展開する。齢七十を超え、金婚式で子や孫から祝賀を受ける。だが関老夫婦は私財を投げうち、北海道に渡る。札幌山鼻を起点に息子の一人が進める石狩樽川地区の開墾、そして十勝の落合からは未開の原野を分け入って陸別の開拓へと向かう。人並外れた意志を貫く夫に尽くし、励ますあいは、小説の象徴する木「山桃」の花ことば「ただひとりを愛する」のとおりである。
高田郁の小説に悪人は登場しない。「お天道様に見られている」と善の道を素直に進む健気な主人公とともに作者は存在する。5年にわたり「みをつくし料理帖」を文庫で書き下ろし、多くの読者を得た。北川景 子そして黒木華の主演により2局でテレビドラマ化された。主人公濡の生きる姿勢、料理人としての揺るぎない努力が名もなき庶民に喜びをもたらす。読者は作者自身が作成した、本に登場する料理のレシピにも感動する。短編集『ふるさと銀河線軌道春秋』(双葉文庫)もお勧めの一冊。