久保俊治(小学館文庫)
登場する地域:道東地域(標津、足寄ほか)

本書は、現在も道東地方に住む著者が、大学卒業後に専業のハンターとして生活を始め、アメリカのハンター養成施設への留学を経て、ヒグマやエゾシカを獲る日々を描いたノンフィクションである。獲物を獲り、肉や毛皮として売ることを生業とする生活。晩秋の道東、ヒグマの痕跡を追って入った山中で、ひとりビバークする夜。狩った獲物を解体し、焚き火で炙って食べる。そこにあるのは、自然に対する、命に対する謙虚で真面目なありようだ。
後半、著者は相棒となる北海道犬と出会い、猟を教えながら少しずつ絆を深めていく。やがてくる、相棒との別れ。相棒の死に涙しつつ、生活のために獲物を狩る。その姿に全く矛盾を感じないのは、著者が命と真摯に向き合う姿が、この本にはしっかりと描かれているからだろう。
ヒグマによるいたましい人的被害があった2023年。大きな話題になったあるヒグマが、人知れず駆除され食肉として出荷されていたという話を聞いた。狩ったからには粗末にしないという、獲物の命に対する敬意。一方で、ヒグマ駆除に対して多数の抗議電話が寄せられたという話もあった。ヒグマの生息域で暮らす私たちだからこそ、読んでおきたい一冊である。