八木 圭一(宝島社文庫)
登場する地域:陸幌町(架空の町、通称「オーロラ町」)

八木圭一は2013年、『一千兆円の身代金』で『このミステリーがすごい!』大賞を受賞しデビューした。香取慎吾主演でドラマ化されたため、ご覧になった方もいらっしゃるかもしれない。ここに紹介する作品は彼の五作目である。実は作者の八木君は私のクラスの教え子、顧問をしていた文芸同好会に所属していた。大学時代、「朝日新聞」オピニオン欄に載った文章を送ってくれた。そこには国の税金の無駄遣いが厳しく指弾されていた。政治への義憤が彼の作家としての基調低音として流れている。それを、直球で表現したのがデビュー作ならば、今回の『オーロラ町の事件簿』は変化球気味にその思いを伝えてくる。「ふるさと創生」に「平成の大合併」。地方は栄えるどころか疲弊し続けている。舞台となった十勝管内の架空の町「オーロラ町」も限界集落となって喘いでいる。ふるさとに戻った主人公が都会の生活を思慕しつつ、次第にふるさとの良さを発見していく様は、本物の「ふるさと創生」への一歩である。素人探偵が活躍する本作の隠し味は地元十勝のグルメ。是非、ふるさと愛に溢れた本作をご堪能ください。