小菅 正夫(角川新書「角川ONEテーマ21」)
登場する地域:旭川市

滝川育ちの私にとって、子供の頃「旭山動物園」は近くて遠い、贅沢な場所だった。
平成の初め、生徒の引率で来た旭山動物園は、ただ広いだけで閑散とした場所だった。まるで高村光太郎の詩「ぼろぼろな駝鳥(だちょう)」のよう。
十数年後に旭山動物園を訪れ、目を疑った。動物たちの生き生きした生態。いくら見ていても飽きない。これが「行動展示」なのか、と感心したものだ。
1994年のエキノコックス禍の中、旭山動物園は閉園も視野に入れた危機に見舞われた。当時副園長だった小菅氏は「大切なのは、不遇の時の準備」と振り返る。伝説の「14枚のスケッチ」をもとに、理想の動物園づくりが始まった。その結果、2004年には東京・上野動物園に次ぐ全国2位の入園者数を記録した。
その舞台裏を語った本書『〈旭山動物園〉革命』。未曾有の危機の中で、小菅氏はじめ動物園スタッフが何を考えたのか。どんなビジョンを持ち、実現にこぎつけたか。その種明かしが示されている。
「命を感じる動物園」旭山の成功は、帯広や釧路、そして札幌・円山動物園にも好影響を与えた。僕らには良き先例に学んで世界を変える力がある。本書はそれを教えてくれる。