佐藤泰志(河出文庫)
登場する地域:函館

「出会い」という言葉に対して果たして私たちはどれほど深く考えたことがあるだろうか。人はひとりでは生きていくことはできず、その道には必ず人との出会いが待っている。その出会いは私たちの意に反する様々な感情・行動をもたらすことが多々あるのかもしれない。そんな「出会い」について考えさせてくれるのが今回紹介する『そこのみにて光輝く』だ。
作品の舞台は作者・佐藤泰志の出身地である函館だ。主人公の達夫は仕事を辞め、人と関わることを避けながら、退職金をもとに生活をしていた。30歳になる手前のある日、パチンコ屋で拓児という男と出会うことから物語は始まる。拓児の家族や住んでいる地域に対する人々の差別や偏見、その家族内での複雑な関係性、そして拓児の姉・千夏への恋など、拓児と出会うことで、達夫は今まで自分でも感じたことのない様々な感情を抱くことになる。
人と出会うことで自分の知らない人生を知ることができる。その人生が特異であればあるほどに興味が湧き上がってしまう。そしてそれは「友情」や「愛」に姿を変えていく。決して飾らない人間らしさを感じながら、出会いについて考え直すきっかけをくれる一冊である。