杉山 滋郎(北海道大学図書刊行会)
登場する地域:札幌市西区

昭和20年、東京は空襲で壊滅状態となる。しかし北海道では印刷所や製紙工場が操業を継続していた。そこで、講談社を皮切りに出版社が次々と札幌に支店を開設し疎開。地元勢も加わり、昭和25年頃までこの地は日本の出版文化を担い、知の再建の発信地となっていた。
そんな中、道内で戦時統合により発足していた北方出版社から昭和22年、「理學モノグラフ」という廉価な科学読み物シリーズが刊行される。著者として多くの北大の研究者達が名を連ね、最先端の科学を解説した企画が読者を集めた。
この札幌の隠れた科学史を発掘した一冊。出版社の熱意と、戦争そして軍事研究の重圧から解放された個性的な北大の研究者達の姿が描かれる。
著者は、科学技術の専門家と市民の橋渡しを担う人材を育てる北大の教育組織「科学技術コミュニケーター養成ユニット(CoSTEP)」の立ち上げから、気鋭のスタッフとともに様々な試みに挑んだ初代代表。
受講生を研究者以外にも広く開放した大学の世界では珍しい斬新な組織からは、優れた専門家のみならず意欲的に知の世界と街をつなげる市民も多数生まれている。
その知の共有の姿に、先駆的な科学シリーズと研究者たちの歴史が重なる。