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地域を知る一冊 vol.33

セバット・ソング

谷村志穂(潮出版社)
登場する地域:七飯町、札幌市

公開:2021年1月18日
地域を知る一冊
公開:2021年1月18日

大沼湖畔に実在する児童自立支援施設をモデルにした駒ヶ岳学院が物語の舞台だ。暴力、触法行為、性非行、虐待や養育放棄などさまざまな理由で家庭から離された子供たちが家庭的な寮生活をおくりながら、自立をめざしている。

 院長の藤城遼平は、誠実に子供たちに向き合うことで家庭では得られなかった心の安らぎと人間への信頼を取り戻そうとする。しかし容赦ない現実に子供たちは追いこまれ、大人たちはなすすべもなく立ち尽くす。

 セバットとは、冬季に全面結氷する大沼湖畔で、凍ることなく白鳥などの渡り鳥が羽を休めることができる場所をいう。兄の拓弥とともに学院を退院した摩耶が札幌のライブハウスで唄う「鳥たちのセバット」という曲を、札幌の病院で勤め始めた藤城の娘・ゆきがYouTubeで偶然見たことから物語は動き出す。

 偏見や差別、今も残る過去の傷や家族との軋轢の中で、安心でき、支えあえる狭いセバットに居場所を求める若者たち。でも近づくからこそ、傷つけあったり、煩わしく感じたり、心が離れてしまうジレンマにも苦しむ。

 それでもまっすぐ前を向く摩耶の歌が物語に流れつづける。それが救いと希望だ。

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