武田泰淳(新潮文庫)
登場する地域:知床

高校に在職し、国語の授業を行ったり、図書館の担当になったりしていたころにずっと「ぜひとも高校2年生以上の多くの人に読んでほしいなあ」と思っていた一編がありました。とても“重い”一編です。それが「ひかりごけ」です。
特に、後半の「戯曲」をじっくり読んでほしいのです。その上で、読後に「冒頭の「ハマナス」「ハマナシ」のこと、どうしてわざわざ書いたのか?」「ラストをどう思ったか?」「どうして、あのようなラストにしたのだろう?!」「船長が見てほしいのはいったい何なのだろう?」「西川を美形にしたり船長の顔つきを変えたりしたのはなぜ?」「検事たちが光の輪を見ることができないのはどうして?!」。
そして、何よりも「この一編のタイトルに「ひかりごけ」を選んだのは何故なのだろう?発光するものは他にもあるのに……」などといったことを、“一緒に語り合ってみたい、ほしい”と思ってしまうのです。
(ただ、この作品は“重い”ので、語り合う相手は選ぶべきです。)「ひかりごけ」は、決してグロテスクでもカニバリズムでもありません。ただただ、人間が生きていくという難題、苦悩、悲哀を物語っていると私は思っています。
北海道ならではの冬の空・冬の海がひたすらに思い浮かんでしまう、苦難を描いた、悲しくも真剣な作品です。読むたびに私は、真摯に生きていかなければと背筋を正します。