佐々木 譲(ハルキ文庫)
登場する地域:長万部、札幌

佐々木譲は夕張出身の直木賞作家。彼は多くの道警シリーズ作品を発表しているが、『雪に撃つ』もその中の一つ。主な舞台は雪まつり開催を翌日に控えた札幌である。自動車盗難、カーチェイスとその際の発砲事件、さらにはベトナム人技能実習生の脱走事件。
最初はバラバラだったはずの事柄が作品の展開に伴って繋がってくるところに面白さがある。そもそもこの作品の冒頭では、長万部で運転中にSUV車の無謀な運転に肝を冷やした家族が、道路わきでたたずむ二人のベトナム人女性と出会い、彼女たちに請われて二人を無事に札幌まで送り届ける手はずを整える場面が描かれていた。
外国人の技能実習制度が体のいい低賃金労働力確保の場になっている実態を作者は浮き彫りにする。過酷な労働環境で命を失うものもいるし、逃亡することも容易でない状況はまさに「タコ部屋」と称するにふさわしい。そこには福岡の暴力団組織も絡んでいた。
人権を守ろうとする団体が札幌にはあった。それがオリーブ交流ハウス札幌である。逃がそうとする側と捕まえようとする側とのつばぜり合い。逃走した実習生と保護団体との約束場所が大通公園だった。だが、その情報は暴力団の知るところとなっていた。多くの観光客が訪れている会場で惨禍を引き起こすわけにはいかない道警のメンバーたち。スリルと興奮を十分堪能できる作品と言えよう。