瀬川拓郎(講談社現代新書)
登場する地域:北海道、他

勉強は進学・就職の道具で、学問は経済に貢献するものという風潮がある。この本を読んで、そのことを考えた。
ここには愛がある。コロポックルのように森で静かに暮らすアイヌの人たちという閉じたイメージを、著者は広大な海を通して世界とつながる人々という絵に描き直そうとしている。多様な人たちとつながる空間的広がりの中のアイヌ像を私たちに見せてくれる。
ここには夢がある。今日の社会で生きにくさを抱える人、「富の意味が理解できず、競合という他者への『攻撃』を心底厭わしく」思う人に「縄文の思想」を提示し、あなたの思いは縄文からつながり、未来で花開くかもしれないとつぶやく。一万五千年前から現代へ、そして未来へとつながる時間的広がりの中に私たちを誘う。
そしてここにはダイナミズムがある。アイヌの研究から海民を通して南島へ、大陸へと広がっていく研究対象。私たちの文化の地下水脈を通して、言語化されていく縄文の思想。ここには時空を越える研究のダイナミズムがある。
勉強が道具だったり学問が経済のためだったりというのは、ずいぶん淋しい話だ。この一冊を読んで世界は少し豊かになり、私はずいぶん励まされた。それでいいではないか。