重松清(講談社文庫)
登場する地域:北都市(北海道の架空の街)

物語の舞台は北海道の北都市、架空の街である。かつて炭鉱で栄えた街、炭鉱事故という悲しい歴史を背負う街、そして大観音が見守る街。私の世代は北海道が炭鉱で栄えた時代を知らない。しかし、「昔、炭鉱があった頃は・・・」というフレーズをあちこちで耳にしてきた。炭鉱が北海道に与えた影響は計り知れない。北都市のような街は、かつて道内各地に存在したのだろう。そして、そこには幾多の生活が、人生があったに違いない。この作品を通して、その一部を垣間見た思いがする。
この物語の幼なじみ4人は、小学生の頃に育んだ友情を、そしてその頃一緒に夢見た「カシオペアの丘」での思い出を大切に生きている。大人になって厳しい現実と向き合いながら、日々の生活に追われながら。時間や距離を隔ててもなお、互いを思い合う4人と、そこに加わる新たな家族、そんな4人に導かれる新たな仲間。シュンの病気をきっかけに再会を果たした人たちが、様々な思いを抱えながらも、互いを尊重しあい、受け入れようとする。その姿に我々読者は、時には切なくなり、その後に心が温かくなる。
「ふるさと」「家族」「友情」「命」「愛」「罪」に真摯に向き合う登場人物に、自分の周りの当たり前になっているもの、その大切さについて教えられた。人間の心の機微を描くことに長けた作者重松清氏の世界を堪能できる、涙なくしては読めない作品である。