三浦綾子(新潮文庫)
登場する地域:旭川、歌志内、札幌

『道ありき』は教科書の墨塗りの場面から語り出される。皇国思想を教え込まれてきた彼女は何の疑いもなく軍国主義教育を実践してきた。その誤りを突きつけられたのが墨塗りだった。その半年後に7年間務めた教職を彼女が辞したのは無理もない。
彼女は「妄信する」ことと同時に、生徒たちから「妄信される」ことの恐ろしさを痛感させられた。全てに対して懐疑的になり、二人の男性と二重婚約までしてしまった。この後彼女は重篤な病に陥るが、その運命を冷笑する彼女がいた。自暴自棄な態度は見るも無残であった。
その彼女の前に現れたのが幼なじみの前川正。彼は肺浸潤を患い、北大を休学していたクリスチャンだった。彼女を救い出そうとする前川に抵抗する綾子だったが、それでも前川はあきらめない。彼は自分の余命を知っており、だからこそ必死だったのである。やがて彼女は前川を愛するようになり受洗する。だが病床の身であった彼女に知らされたのは前川の訃報だった。
絶望の淵に落とされて1年後、彼女の前に現れたのが三浦光世である。光世は寝たきりの彼女にプロポーズする。前川を忘れられないと伝えた綾子に、光世は前川を忘れないことの大切さを訴える。そしてこの言葉に力を得た彼女は奇跡的に回復し、二人は結婚式を挙げるに至る。
綾子は自らの恥部となるものを隠すことなく語っている。幸せは与えられるものではなく、自ら掴み取るものではないか。そのような思いを読者は抱かされる。