成田智志(亜璃西社)
登場する地域:月形町

都道府県魅力度ランキング第1位。北海道を故郷と呼べることを、誇らしく感じる。雄大な大地の恵み、数々の絶景。しかし、慌ただしい日常の中で、豊かなこの地が、かつて未踏の原始森であったことに思い至ることはないかもしれない。
かつて月形町に、明治維新後に増え続けた重罪犯を収める「樺戸集治鑑」があった。囚人たちの労役が苛烈を極める中、実は集治鑑内で野球に興じる囚人の姿があったのである。その史実を取材した『監獄ベースボール』。本書の魅力は、囚人による明治期の北海道開拓についてわかることに加え、志を持って集治鑑運営に励む典獄(現在の刑務所長)の奮闘を追体験できるところである。
樺戸集治鑑第3代典獄、大井上輝前(おおいのうえてるちか)は、国策と懲罰主義により囚人の命が使い捨てられる状況に憤る。囚人教化にキリスト教とベースボールを取り入れ、監獄運営の改善に奔走する。戸惑いながらもベースボールの稽古に励み、白球を追う囚人たち。彼らが打球会(試合)を行えるまでに成長してゆく姿は爽快であり、酷い史実の中において一筋の光を見る思いがした。北海道を、また、野球を愛する人に知られてほしい。当たり前の日常生活を、あなたにとっての野球を、きっととらえ直すだろう。