渡辺 淳一(中公文庫)
登場する地域:札幌、阿寒

渡辺淳一の自伝的小説。「婦人公論」に1971〜72年まで連載し、73年に中央公論社より刊行された。ヒロイン時任純子は札幌南高校の2年生。美術展に出品・入選し天才少女画家と評され、友人らとつくる同人誌では文才も発揮する。同級生の田辺俊一は誕生日の前日、教室の机の中に手紙を見つける。国語の教科書にはさまれた純子からの誘いに、田辺は指定されたすすきのの喫茶店に向かう。つきあいが始まり、「今夜六時に図書館でまた会いたいわ」などとささやかれもして、二人はしだいに距離を縮めていく……。(若き作家の章)
自分の感性に挑み続け、阿寒で果てたとき、純子は18歳だった。作品は田辺、カメラマン、画家、記者、医師、姉、と彼女をめぐる6人の視点からたどる。
渡辺は彼女の没後20年を経て、ようやく筆をとったと伝えられている。75年には五十嵐淳子、三浦友和の配役で映画化された。荒巻義雄『白き日旅立てば不死』(早川書房・72年)では、加納純子として描かれている。彼もまた同級生だった。
この4月、北海道立文学館では特別展が開催される。絶筆となった油彩「阿寒湖風景」が初公開されるという。彼女が最後に見つめていたものは何だったのだろう。