東直己(早川書房)
登場する地域:札幌市(すすきの)

アジア最北の歓楽街すすきのを舞台に、探偵「俺」を主人公に映画化された小説。(映画化第1作の原作)
いつものバーで酒を飲んでいた「俺」に、コンドウキョウコと名乗る女から、去年の8月21日の夜、カリタという男がどこにいたか聞いてほしいと依頼される。依頼を果たした「俺」は、地下鉄駅ホームから突き落とされたが、一命をとりとめる。そして、依頼人と同姓同名の女が、地上げにまつわる放火事件で殺されたことを知る。探偵に電話をかけてきた女の謎を紐解くごとに、真実の愛を目の当たりにすることになる。
「俺」の相棒で空手の達人高田が、苦境に立たされた「俺」を助けながら、事件が徐々に解決されていく中、ユーモアにあふれた2人の相手構わずの「減らず口」が読者に爽快感をもたらす。作中の、すすきののビル、居酒屋、喫茶店、バーなど現存するものを想像させ、酒を浴びるほど飲み翌日は記憶がおぼろげになる場面など、作者「東直己」のすすきのと酒をこよなく愛することを実感する作品である。
この小説の読者は、「俺」=東直己と思い込んでいる人が多くいるが、7年前すすきののとあるバーで偶然に東氏と飲み合わせ、「このシリーズは私小説ではなく、小説だ」と言い切った姿が目に焼きついている。「俺」は東直己ではない。